女性従業員のキャリアアップ応援事業

コラム

【コラム】東京都女性活躍推進大賞受賞『小宮商店』様 インタビュー<前編>

令和2年度「東京都女性活躍推進大賞」が発表され、「株式会社小宮商店」様が大賞を受賞されました。小宮商店様には当事業の研修をご活用いただくとともに、研修会では交流会のパネリストとしてもご協力いただきました。

小宮商店様は、洋傘の製作と販売を行う従業員14名の会社です。2020年には「えるぼし」2段階目に認定されています。「東京都女性活躍推進大賞」では【男性中心型の職人によるものづくり企業において一から女性活躍推進に取り組み、技術継承や業績拡大に発展】といった点が評価されました。今回はその小宮商店様にお話を伺いました。

  事務局   この度は「東京都女性活躍推進大賞」の受賞おめでとうございます!

  小宮商店 伊藤裕子さん   ありがとうございます!受賞企業は大企業も多くて、まさかうちの会社が受賞できるとは。嬉しくて、びっくりしました。

女性活躍推進の取組をはじめたきっかけ
  事務局   御社では洋傘を製作されていますが、業態や事業規模などを考えると、受賞されたことの意味は大きいのではないでしょうか。また、女性活躍の取組はいつ頃からはじめられたのですか?

  伊藤さん   当社のような予算の少ない小さな会社が、女性活躍推進大賞を受賞し、大企業と肩を並べることができた事は、これから取組まれる小さな会社のご担当者様の励みになれるんじゃないか、と嬉しく思いました。取組は2016年からはじめました。2016年に東京都の広報冊子で「女性活躍推進人材育成研修」(本事業の前身事業)の参加者募集の記事を見たのがきっかけです。私は男女雇用機会均等法制定後、間もない頃に就職した世代ですが、その頃から30年くらい経つのに、また新たに女性が活躍するための法律をつくらなければならない程進んでいないんだなあと、とても興味をもちました。

    事務局     伊藤さんご自身はいつ頃入社されたのですか?

  伊藤さん   2013年にパート社員として入社いたしました。それまでも保険会社で事務の仕事をしていたのですが、その当時、90代祖母を70代母が通いで老老介護している状態でしたので、私も母と一緒に介護をすることに決め、両立できるよう週2~3回ほどの事務職のパートを探し転職、その後正社員になりました。

入社してからわかったのですが、傘業界は昔から男性主体で成り立っていて、職人さんももちろん男性。昔ながらの風土や仕事の慣習がありました。私が入社した当時は卸売り中心でしたが、7年程前に一般のお客様向けの販売をはじめるようになり、販売員として女性を採用することとなりました。当初は人材が集まらず苦労しましたので、せっかく採用出来た女性社員が結婚や出産などで生活が変わっても、長く働ける環境を整えたいと考えて、取組をはじめることにしました。

    事務局     伊藤さんご自身の経験や、女性活躍推進に対する思いなどが、取組の原動力になったとのことなのですね。取組にはご苦労もあったのではないでしょうか。

  伊藤さん   苦労もあったと思いますが、当時は何とかなるといった気持ちで、悲観的になることは無かったです。当時60代以上のベテラン男性社員の方がほとんどで、私が電話にでると「女の人が入ったんだね~」と取引先の方々に言われました(笑)。人柄がよく親しみやすい方ばかりで、私はこの会社の雰囲気が好きでした。このいい雰囲気を壊さずに、この中で女性も働き続けられるような就業規則ができたらいいなあと感じていました。

また、当社の傘を作っている職人さんは80代の方お二人といった状況でしたので、後継者の心配もありました。あと、以前は催事場や卸売り中心でしたので、売り方も男性目線になっていたかもしれません。傘に使う生地は甲州織という貴重な織物を使用しています。技術はあるものの、購買層は年齢が高く、ターゲット層が狭まっており、商品のバリエーションも少ない状況でした。品質は良いのに、このままでは生き残るのは難しいかもしれないと…。

フィードバックを欠かさない 伊藤さんの女性活躍の取組
    事務局     社内での取組はどのように進めていかれたのでしょうか。

  伊藤さん   当事業の研修会などでいただいた資料をアレンジして、社内で勉強会を行いました。女性活躍推進の取組が必要な背景や、男女の役割の先入観を取り除くといった内容なども伝えて。「女性活躍推進法を知っていますか?」「会社で困っていることはありませんか?」など無記名のアンケートもつくりました。集まったアンケートは、会社の良い点悪い点を集計して、次の勉強会でフィードバックをするようにいたしました。例えば女性が同じ回答をしていたもので、男女共用トイレの問題がありましたが、アンケートをきっかけに女性専用のトイレをつくりました。

    事務局     他の会社様からも、女性専用トイレや更衣室の設置の事例をお聞きしています。男性目線ですとなかなか気づかないことですよね。ひとつずつ対応していかれて、社員の方々の捉え方も変わっていったということでしょうか?

  伊藤さん   時代が変わっているのだと、みんなが好意的に捉えてくれた様に感じます。女性活躍の取組をしていて、「うちの会社は進んでいて凄いもんだなぁ」と思った人もいたようです。
その反面、取組が必要な背景を説明しても、女性活躍というワードに抵抗を感じて、「女性だけ特別扱い」「男性のことも考えてほしい」などの声もありました。なので、みんなが働きやすくなるといった共通の目的のために納得できる様な取組にしようと心掛けました。ワークライフバランスや生産性を上げていくことでしたら、みんなにメリットがあるのではないか、そういった制度であればみんなが関心を持ってくれるのではないかと考えて、そのアプローチで進めました。例えば一人が専任で仕事をしていると、その人が休んだ時に仕事が分からず困ることがありますが、そうならないようにサブの役割分担も行うようにしました。

    事務局     社員全員が受入れやすい事柄から取り組まれて、土壌を作っていかれたとのことなのですね。伊藤さんの必ずフィードバックされる姿勢が素晴らしいと思いました。

  伊藤さん   アンケートに書いたこと、どうなったかな?と気になりますよね(笑)。 みんなが協力してくれたことですので、いい点や改善点、特に改善点はできることやできないこと、できない理由なども、フィードバックしています。

    事務局     信頼の積み重ねですね。

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今回はここまで。後編では「女性目線で見えてきた課題」「ブランディング強化」「動画による新人教育」「全社的な取組へ」といった内容をご紹介いたします。後編はこちらからお読みいただけます。