女性従業員のキャリアアップ応援事業

コラム

【コラム】東京都女性活躍推進大賞受賞『小宮商店』様 インタビュー<後編>

令和2年度「東京都女性活躍推進大賞」を受賞された「株式会社小宮商店」様のインタビューを前編・後編に分けてご紹介しております。今回のインタビュー<後編>では女性活躍に取組まれたことで起きた変化などをお話しいただきました。

インタビュー記事の前編はこちらをご覧ください。

女性目線で見えてきた、商品ラインナップの課題
    事務局     小売をはじめられて、商品のラインナップが課題と感じておられたようですが、どのように改善を進められたのですか。

  伊藤さん   若手の女性社員が入社し、女性が3人に増えたことで発言しやすい環境になっていきました。例えば「高い傘を売っているのにラッピングが良くない」といった意見なども出てきました。
小売を始めてからギフトの需要が多くなり、女性の発案で現在のギフトボックスとエコを意識したコットンバッグが出来上がりました。また、女性ばかりではなく男性もお洒落になってきていますし、商品も考え直さなければならないのではないかと感じました。

    事務局     提案された時は、周りの方や職人さんは受け入れてくれましたか。

  伊藤さん   傘を作るにあたって、品質を維持するためには、生地と骨組みなどの組み合わせを考慮する必要があります。職人の品質へのこだわりを理解し、守っていくことが第一です。「今度こういったものをつくりたいのですが出来そうですか?」など、改まった場で提案するよりも、ベテランの方も交え、企画担当者が雑談をしつつ伝えるようにしていました。職人さんからは「サンプル作るから見てみなよ」など言ってくれるようになり。出来上がったものをみんなで「いいですね!」など言うと、職人さんも新しいことに挑戦できて嬉しかったみたいです。現在は、各担当部門をこだわらない会議の場で、社員の職人さんからも商品企画について意見をもらえるようになりました。

    事務局     相手も尊重する、相互理解の姿勢が新たなチャレンジを成功に導いたのですね。

ブランディングの強化へとつながる
  伊藤さん   その他にも、女性の発案で職人が傘を作る姿を動画で紹介し始めました。以前は知る人ぞ知るといった商品で、あまり価値を伝えられていなかったと思います。1本の傘をつくるためにはこれだけの手間暇がかかり、だからこの値段で販売させていただいていると。そういった価値を知っていただけたらと思っています。

以前の小宮商店の傘は、ネームタグ・商品説明タグなどつけていませんでした。せっかく良い傘を作っても、「小宮商店の傘」と認識してもらえなかった。女性が増えてきてからは、さらに社内の雰囲気が明るくなり、男女ともに社内のあちこちで仕事の意見交換がされるようになりました。みんなの思いで、ブランディングにも力を入れはじめ、改良を重ねた末、現在のロゴやカタログができ、公式HPも3年くらい前にリニューアルいたしました。その結果、売上の拡大という大きな波及効果がありました。

    事務局     あたたかみのある公式HPで素敵ですね。商品開発やブランディング強化で新しい購買層を開拓され、職人さんにとっても、新たにチャレンジが注文へ繋がることはやりがいを感じられることでしょうね。
女性の職人さんの育成も始められたとお聞きしています。

新人教育 「職人の背中を見て覚える」から「動画で確認できる」環境へ
  伊藤さん   はい、職人見習いで女性を採用しました。ただ、師匠である昔ながらの傘職人はご自身が「背中を見て覚えろ」といった中で修行をして一人前になった世代で、誰かに教えていくのはむずかしい…。見習いの方に聞くと「手の動きも早いのでよく見えないです」など言っていて。今では職人の動きを動画で撮って社内で共有し、紙のマニュアルも作成し、いつでも確認できる状況にしました。

    事務局     日本の伝統ある産業のひとつですから大切にしたいですね。以前は後継者不足の問題もあったとのことですが、今は求人に対して多くの応募があるとお聞きしました。

  伊藤さん   職人の作業動画は、伝統工芸やアートが好きな人にも話題になったようで、そのきっかけで求人の応募も来るようになりました。特に女性職人の作業風景をHPで公開してからは、女性の応募者の方が多くなりました。現在男女合わせて若手職人は20~30代の方が7名となりました。そのうち正社員の女性職人は1名、業務委託で3名の女性職人が小宮商店の傘を作っています。昨年の職人見習いの募集では、一度で70名くらいの応募がありました。取組をはじめた頃は、この先後継者をどうしよう…と思っていたレベルでしたのに、今では選考が大変で、育成人数に限りがあり、申し訳ない気持ちもあります。
また、ここ数年は、地域の小学生が総合学習の時間に企業訪問で見学に来てくださることもあります。

2期目の行動計画策定 会社全体での取組へ
    事務局     2016年から女性活躍推進の取組をはじめられて、いまは2期目とのことですね。

  伊藤さん   1期目の行動計画は2016年に策定し、2019年までのものでした。前回の目標は3年間でだいたいクリアできたので、2期目も新たに作ろうと、2019年から再度こちらの事業の研修会に通い始めました。2016年当時と比べ、研修の回数も多く参加者もかなり増えていて、色々な企業の方が女性活躍に取組み始めていることを実感しました。研修会では同規模の会社の方ともつながりができて良かったです。

(本事業の)研修会では「えるぼし取得を目指しましょう」といった内容もありました。ただ、弊社は特に男性の平均勤続年数が非常に高く、女性の勤続年数はまだ3年くらいですので3段階のえるぼし認定は難しいことがわかりました。その為2段階目のえるぼし認定を目指しました。
※2020年にえるぼし2段階目獲得

    事務局     2期目はどのように進めていらっしゃいますか。

  伊藤さん   2期目では、女性の継続勤務年数の向上や、働く環境の整備を目標にしています。1期目で見直した就業規則を時代の変化に対応できるようさらに見直し、社労士の先生と何度も相談。昨年、現在の育児介護規定・賃金規定・テレワーク就業規定が整いました。また、2期目になり、社長にも女性活躍推進の研修会に出席していただきました。以前から、「伊藤さんがやってくれているな」と把握してくれておりましたが、研修会に参加したことで、たくさんの企業が女性活躍に取組んでいることを理解してくれたようです。そこからさらに協力いただけるようになりました。

    事務局     会社全体の取組になっていかれたのですね。

  伊藤さん   私を含めた女性管理職も誕生し、昨年には、産休・育休の取得第一号も出て、もうすぐ産休を取得する職人の女性社員もおります。「女性も安心して働ける制度が出来てよかった、ありがとうございます。」と言われました。取り組んできてよかった、と嬉しく思える瞬間です。

    事務局     感謝されるのも原動力となりますね。社長様も、取組の結果である大賞受賞を喜んでおられるのではないでしょうか?

  伊藤さん   はい。喜んでくれていると思います。もともと社長は多くを語りませんので(笑)。2016年、まだ小さな会社が取組はじめた例もでてなかった頃に、私が最初の研修会へ参加したいと申し出たのを快く承諾してくれました。社長の包容力は、私にとっても大きな支えとなっています。社内アンケートを行う時などに、社長から「みなさん協力をしてくださいね」と前置きをしてくれるのでありがたいです。社長からその一言をいただけるようになって、より取組がしやすい環境になりました。ボトムアップからはじめていきましたが、結果的には社内のみんなを巻き込んでいけたところが良かったかなと思います。
社長自身も、伝統的な技法・技術で作られた「東京洋傘」を東京都の伝統工芸品に認定してもらえるよう、洋傘の歴史や作り方など様々なことを調べ、各所に働きかけを行っておりました。その結果、2018年に東京都の伝統工芸品として幾つかの日本製傘が認定され、長年、当社の洋傘制作に携わってきた職人も伝統工芸士として認定されました。

    事務局     女性活躍に取組む企業様からは「取組みたいけれど自分一人では思うように進められない」「経営層に取組についてどのように伝えたらよいかわからない」など不安の声を伺うことがあります。小宮商店さんのように、売上の拡大、ブランディング強化なども成果を出され、求人募集に70人の応募があるなど、一歩ずつ確実に成果を出されていることが、大賞受賞につながったのだと、お話を伺って改めて感じました。

  伊藤さん   えるぼし認定企業となってからは、(本事業の)研修会にパネリストで登壇させていただくなど、社外とのつながりもできました。研修会の講師の方や、事業の担当者の方も、親身になって応援してくださったから頑張れたと思います。とても感謝しています。えるぼしも1回では認定されず、2、3回と挑戦しました。まずはやってみて、ダメだったらまた考えて改善して出直す…その繰り返しです。とりあえず、やってみることが大切なような気がします。他の企業の取組を聞き、真似できそうなことを取り入れていくことも必要だと感じました。

    事務局     本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
女性活躍推進に取り組まれている企業様に参考いただける取組の数々だと思います。
これからもますますのご発展を祈念しております。

  伊藤さん   日常業務に追われる中、女性活躍の取組を進めていくのは大変なことも多いですが、研修会で知り合えた方々との交流を持てたおかげで、自分一人じゃない、という気持ちが強くなり不思議と頑張れました。こちらこそ、ありがとうございました。

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今回は前編・後編に分けて小宮商店様へのインタビューをお伝えいたしました。

本事業HPでは、小宮商店様以外にも、先進企業の取組事例をご紹介しております。
女性の活躍推進に向けたヒントとして、ぜひご参考になさってみてください。

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